こんにちは、Nota行政書士事務所です。
昨日(11月20日)、AIクリエイター界隈に激震が走るニュースが飛び込んできました。
千葉県警が、生成AIで作成された画像を無断で複製し電子書籍の表紙に使用していた人物を、著作権法違反(複製権侵害)の疑いで書類送検した、という報道です。全国初の摘発とされています。
AI生成画像を無断複製、初の摘発か 著作権法違反疑いで男性書類送検 – 日本経済新聞
これまで「AIが作ったものに著作権はあるのか?」といった議論はずっと続いてきましたが、今回の警察の動きは少なくとも、
「AI生成物=全部フリーでしょ?」
という雑な理解が、もはや通用しないことを実務レベルで可視化した事例と言えます。
今回は、このニュースを行政書士という「予防法務(トラブルを未然に防ぐ)」の視点から読み解き、クリエイターや企業の広報担当者が「今、やっておくべき自衛策」について解説します。
1. なぜ「AI生成画」で警察が動いたのか?
日本の著作権法では、著作権が認められるのはあくまで「人間の創作」に限られます(著作権法2条1項1号)。
文化庁の整理でも、
- 人の創作性が認められない、機械的・自動的なAI出力は「著作物」に当たらない
- 一方で、人による創作的な関与(構図の工夫、細かな指示、選択・編集など)が認められる場合には、AIを道具として用いた著作物になり得る 参照:文化庁
とされています。
つまり、「ボタン一発で出てきた画像」だからといって、常に著作権ゼロとは限らない
というのが、もともとの考え方です。
今回の千葉県警の事案では、報道ベースですが、被害者が生成AIに多数回にわたって指示を出していたことなどをもとに、画像には人の「創作的寄与(creative contribution)」があると判断し、「著作物」であり「複製権を侵害した」と構成したとされています。
ここから読み取れるのは、
AIを自動販売機のように「ガチャ回し」しただけのものではなく、
プロンプトの工夫や修正指示、生成後の画像編集ソフトによる加工などを通じて、
「思想又は感情を創作的に表現した」と言えるレベルにまで高めた作品については、
従来の著作権法の枠組みの中でも「著作物」として扱われ得る。
という実務上のメッセージです。

言い換えると、AIはもはや『自動販売機』ではなく、人がコントロールして使う『筆』や『ブラシ』に近いものであるとして扱われ始めた、と評価することもできます。
2. 行政書士の視点:「創作プロセス」の証拠化が命運を分ける
ここで重要になるのが、
もし、あなたの作ったAI作品が勝手に使われたとき、「これは私が創作的に関与した著作物です」と言えますか?
という点です。
弁護士はトラブルが起きてから戦うのが仕事ですが、
私たち行政書士は「トラブルが起きても負けない(あるいはトラブルを起こさせない)ための書類整備」が仕事です。
今回のニュースを受けて、私が皆さまに強くお勧めしたいのが、
「創作プロセスの事実証明(証拠保全)」です。
明日からできる3つの自衛策
①プロンプトとシード値のログ保存
・どの生成AIモデルを使って
・どのようなプロンプト・パラメータ・シード値で
・どのくらい試行錯誤したのか
といった情報は、それ自体が「創作意図」と「関与の程度」を示す重要な証拠になります。
利用している生成AIツールにログ保存やエクスポート機能があれば、
案件ごと・作品ごとに必ずバックアップしておきましょう。
②作業工程のスクリーンショット・画面録画
一発出しではなく、修正を繰り返している過程を記録に残すことも有効です。
・プロンプトの書き換え
・局所的な修正指示
・生成後の画像編集ソフト(Photoshop 等)でのレタッチ・合成
といった工程を、スクリーンショットや画面録画で残しておくことで、
「AI任せにしていたわけではなく、自分の創作的判断を反映させている」
ことを具体的に示すことができます。
③権利関係の明示(透かし・メタデータ・注記)
技術的には、C2PAなどの来歴証明(プロベナンス)技術への対応が進みつつありますが、
現時点でもできることは多くあります。
・作品にクレジットや透かしを入れる
・画像ファイルのメタデータに、作成者名や作成日時、使用ツール等を記録しておく
・WebやSNSに公開する際に「生成AI+人による加筆修正」「無断利用禁止」などの利用条件を明記しておく
といった対応は、すべて
「自分が作った」という事実を、客観的な資料として積み上げていく
行為になります。これはまさに、行政書士実務でいうところの「事実証明」の第一歩です。
3. ビジネス利用における契約書の重要性
逆に、企業がAIクリエイターに制作を依頼する場合も、今回のニュースは他人事ではありません。
「AIで作ったんだから著作権フリーでしょ?」と安易に考えると、今回のように痛い目を見ることになります。
これからの制作委託契約書(業務委託契約書)では、少なくとも次のような条項を検討すべきです。
- 使用AIツールの明記(例:Sora2、Stable Diffusion、Midjourney、Canva など)
- ※社内コンプライアンス上、使用NGツールがある会社も増えています。
- 生成物の権利帰属の明確化
- 純粋なAI生成部分
- 「人の加筆修正・編集部分」をどう扱うか、クレジット・利用範囲を含めて整理しておくこと。
- 保証条項(表明保証)
- 「第三者の著作権その他の権利を侵害していないこと」
- 「学習データや素材の出所が適法であること」
などについて、どこまでクリエイター側に保証させるか。
- 免責・責任分担のルール
- 万が一トラブルになった場合に、
- 誰が、どこまで責任を負うのか
- どこから先は発注者側のリスクとするのか
を、事前に決めておくことが重要です。

契約書のひな形が数年前のままになっている企業様は、生成AIを前提とした制作案件が増える前に、ぜひ一度見直しをお勧めします。
まとめ
法律の条文が急に変わったわけではありません。
しかし、生成AIをめぐる技術と実務運用は、2025年現在、急速に動き始めています。
今回の千葉県警による摘発の事案は、
「AI生成物は全部フリーだから、勝手に使ってOKなんじゃないの」
というあやふやな認識が、もはや通用しないことをはっきり示した事件と言えます。
- クリエイターの方は、「創作ログの保存」を。
- 発注者の方は、「契約書の見直し」を。
「どこまでが権利として守られるのか不安だ」「契約書にどう盛り込めばいいかわからない」という方は、ぜひ一度、予防法務の専門家である行政書士にご相談ください。
当事務所は、日本行政書士会連合会が認定する「著作権相談員」である行政書士が、
・生成AI利用に関する契約書の作成・リーガルチェック
・社内ガイドライン・ポリシー策定のサポート
・著作権・コンテンツビジネスに関するご相談
などを承っております。
あなたのクリエイティブを守るための「盾」を、一緒に準備しましょう。
本記事は2025年11月時点での法的解釈および報道に基づく私見であり、個別の事案に対する法的判断を保証するものではありません。具体的な紛争については弁護士にご相談ください。

